赤ちゃんの“うつぶせ運動”が発達に良いって聞くけど、何が良いの?

うつ伏せ運動

赤ちゃんの“うつぶせ運動”は脳と体の発達を促して運動能力を高める!

赤ちゃんの“うつぶせ運動”は、日本では馴染みが薄いように感じます。欧米では“タミータイム(tummy time)”と呼ばれ、発達を促す運動として新生児頃から推奨しているようです。

赤ちゃんの脳や体は、成長と共に周囲から刺激を受け、急速に発達していきます。特に脳の成長は著しく、出生後〜3歳までに多くの神経回路を形成し、大人と変わらない大きさまで成長します。

脳が大きく成長する時期に発達を促す運動を行うのは、今後の成長の基盤を作るうえで効果があると考えられます。

“うつぶせ運動”は、これから寝返りやハイハイを始める赤ちゃんにとって脳や体の機能を高めるポイントが沢山詰まっています。安全に配慮して、親子のコミュニケーションを図りながら行う方法をまとめてみました。

“うつぶせ運動”すると何が良い?

首すわりが良くなり、肩甲骨周りの筋肉が使えるようになる

赤ちゃんを“うつぶせ”にすると、自分で首を持ち上げるように努力する様子が見られます。この動作を繰り返すことによって、首から肩甲骨にかけての筋肉が刺激され首すわりが良くなります。また肩甲骨周囲の筋力が使えるようになることは、後に生じる手をついて体を起こす動作を安定させるので“寝返り”や“ハイハイ”動作の基盤になります。

首が起きることで手をつけるようになる

首を起こす動作を繰り返すことで、手を着いて体も起こせるようになってきます。手を床面につくことができるようになると指が開き、手の平で床を押すようになり、手から腕、腕から体へと力を伝えるメカニズムが作られていきます。手で体を支えられるようになると、片手で体を支えたまま目標物に手を伸すことや次の動作へ移る時の重心移動が効率よく行えるようになります。

呼吸がしやすくなる

首や体を起こすことで、単純に内蔵への圧迫が少なくなります。首から肩甲骨にかけての筋肉を使うと、体を支えるために腹筋を使うことにもなるので呼吸にも良作用があると考えられます。また、首が起きた後に手で床を押す(支える)ことができるようになると肩周りの筋肉の活動と共に肋骨が動き胸も開くので呼吸が行いやすくなります。

動作のキッカケができる

“うつぶせ”で首を起こせるようになると視野が広がり周囲へ興味を持ち始めます。興味があるものが増えてくると、手を伸ばしたり移動したりするキッカケができるので、この後の“寝返り”や“ハイハイ”への意欲が生まれます。

うつ伏せ

その一方でSIDS(乳幼児突然死症候群)などのリスクも?

乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)とは、一歳以下の赤ちゃんが何の兆候もなく、睡眠中に突然死してしまう原因不明の病気です。SIDSのリスクが低くなるポイントとして①一歳になるまでは仰向けで寝かせる、②出来るだけ母乳で育てる、③タバコをやめるの三点が挙げられており、赤ちゃんに“うつぶせ運動”をさせることはこれに繋がるのではないかと心配するお母さんも多いようです。

“うつぶせ運動”と“うつぶせ寝”は違う‼︎

確かに“うつぶせ寝”はSIDSの原因と言えますが、ここで重要なことは「“うつぶせ運動”と“うつぶせで寝かせる”ことは違う」ということです。

“うつぶせ寝”は「うつぶせ状態で寝かせること」で“うつぶせ運動”は「目を覚ましている赤ちゃんがうつ伏せ状態を練習すること」です。赤ちゃんが起きている状態で、ベッドなどの環境と赤ちゃんの呼吸状態に注意を払い、楽しく行うことが重要です。

常に呼吸をチェック‼︎

赤ちゃん自身が首を十分に持ち上げられない時期は、首を横に向け呼吸がしやすい状態で始めましょう。うつぶせ状態で背中を軽くさすったり、トントンと叩いて刺激を加えたりすると、首を持ち上げる努力をし始めます。首の向きは左右同じくらいの時間で行います。慣れるまでは数十秒から始め、苦しくない程度で徐々に時間を増やしていきましょう。

寝かせる場所は硬めの布団で‼︎

顔が埋もれてしまったり動きを阻害したりするような柔らかい布団の上でうつ伏せ運動を行うことは危険です。プレイマットや畳などのある程度固いところで行いましょう。また寝起きなどのすぐ寝てしまうようなタイミングで行うことも避けましょう。赤ちゃんが覚醒して元気な時に実施することが理想的です。

うつぶせ中は目を離さない‼︎親子でコミュニケーションをとりながら楽しく行いましょう‼︎

安全面に関しては、“うつぶせ運動”を行なっている間は目を離さないことが一番重要です。慣れてきても側を離れないようにしましょう。“うつぶせ運動”で首すわりが早まることは、視野が広がり興味のあるものへ動き出すキッカケになります。頭を持ち上げてきたら積極的に目線を合わせ、親子でコミュニケーションをとりながら行いましょう。

でも、“首座り”もまだ出来ない赤ちゃんをうつ伏せにさせるなんて、ちょっと怖い。ちょっと怖かったら、お腹の上でうつぶせに!

首が座っていない赤ちゃんを、うつぶせにするなんてちょっと怖い、と感じる人も多いと思います。そんな時は縦抱きにしたまま、抱いている人が徐々にリクライニングしてうつ伏せに近づけていきましょう。それに慣れてきたら、固めのマットに移動してもいいと思います。

まとめ

“うつぶせ運動”をしないと赤ちゃんの発達が遅れるということはありません。しかし、“うつぶせ運動”は、これから動き始める赤ちゃんにとって大切な『動き出しのキッカケ』に繋がることが詰まっています。環境に十分に配慮して、出来る範囲で無理せず行ってみましょう。

[注意]
本記事の内容は著者の専門家としての見解に基づくものです。ただし、特定の環境や個々の事例によって効果・リスクは異なる場合があるため、判断および行動による結果について責任を負うものではありません。安全の確保等は皆様の責任で行い、ご不安な場合はかかりつけ医に相談するなどしてください。

この記事を書いた人

理学療法士

古橋沙やか